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系統用蓄電池の完成物件を購入する前に確認したい10のポイント|投資家向けDD入門

系統用蓄電池への投資を検討している投資家様・事業会社様の中には、

「土地から開発するより、完成済みの蓄電所を購入したい」

「すでに系統連系している物件なら安心では?」

「販売価格と想定利回りを比較すれば判断できる?」

と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

完成済みの系統用蓄電所には大きな魅力があります。

土地探し、系統接続検討、工事費負担金、造成、設備調達、EPC工事など、開発段階にある多くの工程をすでに通過しているからです。

しかし、

「完成している=投資リスクがない」

という意味ではありません。

むしろ投資家が完成済み蓄電所を購入する場合には、

土地・系統・設備・契約・収益・補助金などを一体として確認する

必要があります。

そこで重要になるのが、

DD(デューデリジェンス)

です。

今回は、完成済みの系統用蓄電池を購入する投資家・事業会社が確認しておきたいポイントを、不動産会社の視点から10項目に整理してみたいと思います。

 

そもそもDD(デューデリジェンス)とは?

DDとは、

Due Diligence(デューデリジェンス)

の略です。

投資や企業買収、不動産取引などを行う前に、対象となる資産や事業について詳細な調査を行うことをいいます。

例えば一棟マンションを5億円で購入するとします。

販売図面に、

「満室想定利回り5%」

と書かれていたからといって、それだけで5億円を支払う投資家は少ないでしょう。

レントロールを見る。

賃貸借契約を見る。

修繕履歴を見る。

建物を調査する。

登記を確認する。

融資条件を確認する。

将来の修繕費を考える。

こうした確認を行って、

「本当に5億円を投資してよい物件なのか」

を判断します。

系統用蓄電池も同じです。

ただし一棟マンションとは異なり、

電力・設備・市場運用

という専門分野が加わります。

 

完成済み蓄電所のDDは「不動産DD」だけでは足りない

系統用蓄電池の完成物件では、大きく分けて次のような調査が必要になります。

不動産DD
土地、境界、権利関係、借地等

法務DD
売買契約、系統関係、EPC、O&M、アグリゲーター等

技術DD
蓄電池、PCS、変圧器、EMS、施工品質、劣化等

電力DD
系統連系、契約内容、市場参加条件等

収益DD
売上、運用費、市場収益、収益シミュレーション等

税務・補助金DD
補助金、税務処理、設備の処分制限等

つまり、

「土地+設備を買う」

だけではなく、

「稼働する蓄電所事業を買う」

という視点が必要になります。

それでは具体的に10のポイントを見てみましょう。

 

ポイント① 「何を買うのか」を最初に確認する

最初に確認したいのは価格でも利回りでもありません。

今回の売買対象は何なのか?

です。

例えば「完成済み系統用蓄電所 販売価格6億円」と書かれていても、その6億円に、

土地。

蓄電池。

PCS。

受変電設備。

EMS。

系統関係。

各種契約。

などの何が含まれているのかを確認する必要があります。

さらに取引スキームによっては、

土地・設備等の資産を直接購入する方法

ではなく、

蓄電所を保有するSPCの株式・持分を取得する方法

も考えられます。

この場合は確認内容が大きく変わります。

したがって最初に、

今回購入するのは「資産」なのか「事業」なのか「会社」なのか?

を明確にすることがDDの出発点です。

 

ポイント② 土地|所有権か借地権か

不動産会社として最初に確認したい部分です。

完成済み蓄電所でも土地条件は重要です。

確認したいのは、

  • 登記名義
  • 所在・地番
  • 地目
  • 地積
  • 境界
  • 接道
  • 法令上の制限
  • 担保権等
  • ハザード
  • 土地利用に関する許認可

などです。

さらに重要なのが、

所有地なのか借地なのか

です。

土地所有権を取得する案件なら、蓄電池設備が将来古くなっても土地という資産が残ります。

一方、借地型の場合には、

借地期間

地代

更新条件

中途解約

事業譲渡時の地主承諾

設備撤去・原状回復

などを確認する必要があります。

例えば蓄電池を20年間運用する事業計画なのに、土地賃貸借契約が残り10年しかなければ、出口戦略にも影響します。

 

ポイント③ 系統連系|「連系済み」という言葉だけで判断しない

完成済み系統用蓄電池で非常に重要なのが系統です。

販売資料に、

「系統連系済み」

と書かれていても、それだけで終わらせない方がよいでしょう。

確認したいのは、

  • 接続先
  • 受電電圧
  • 出力
  • 充電側・放電側の契約
  • 契約名義
  • 連系開始日
  • 工事費負担金の支払状況
  • その他の未払金
  • 買主への契約上の地位等の承継方法

などです。

特に2026年には系統用蓄電池の系統アクセス制度が見直されています。

OCCTOは2026年6月、系統用蓄電池について発電側・需要側双方の契約受付を要件とすることなどを系統アクセスの流れへ反映しています。

また、2026年4月以降に契約申込みを受領する系統用蓄電池案件では、保証金の水準が10%へ引き上げられています。

完成物件だからこそ、

「いつ、どの制度・条件で系統契約が成立した案件なのか」

まで確認したいところです。

 

ポイント④ 蓄電池・PCSなどの設備仕様

次に設備です。

これは不動産会社だけでは判断が難しく、技術者やEPC事業者などとの連携が必要な分野です。

確認したいのは、

蓄電池メーカー

型式

定格出力

定格容量

PCSメーカー・仕様

変圧器

EMS

製造年月

設置年月

などです。

例えば同じ、

2MW/8MWh

と記載された蓄電所でも、メーカー、セル、PCS、EMS、保証条件などによって内容は異なります。

したがって、

「2MW/8MWhだから同じ価値」

とは考えない方がよいでしょう。

 

ポイント⑤ SOH・設備劣化|新品と中古では価値が違う

すでに運転を開始している蓄電所なら、特に重要なのが、

SOH(State of Health)

です。

簡単にいえば、蓄電池が新品時と比べてどの程度の性能を維持しているかを見る指標です。

蓄電池は充放電を繰り返すことで徐々に劣化します。

経済産業省による系統用蓄電システムの収益性分析でも、試算条件として20年間で容量が80%まで低下する想定、すなわち年率換算約1%の容量劣化を置いたケースが使われています。もちろん実際の劣化は製品・運用条件等によって異なります。

したがって中古・稼働済み蓄電所なら、

  • SOH
  • 充放電履歴
  • 運転時間
  • 故障履歴
  • セル交換履歴
  • 異常停止履歴
  • 実効容量

などを確認したいところです。

不動産でいう、

築年数+建物状況調査

に近い確認項目と考えると分かりやすいかもしれません。

 

ポイント⑥ メーカー保証・EPC保証

設備そのものと同じくらい重要なのが、

保証

です。

例えば蓄電池メーカーが10年間の保証を付けていたとしても、

「売主に対する保証」であって、所有者が変わった場合にも当然に承継されるとは限りません。

確認したいのは、

保証期間

容量保証

性能保証

保証対象

免責事項

保証請求方法

所有者変更時の承継

などです。

EPCについても同様です。

施工不良が見つかった場合に、

誰が責任を負うのか。

保証期間はいつまでか。

売却後も保証を受けられるのか。

を確認します。

完成直後の物件なら、保証が残っていること自体が資産価値の一部とも考えられます。

 

ポイント⑦ アグリゲーター・O&M契約

完成済み蓄電所を購入しても、それだけでは収益は生まれません。

重要になるのが、

誰が運用するのか

です。

アグリゲーターについては、

  • 契約相手
  • 契約期間
  • 運用報酬
  • 収益分配
  • 固定報酬か変動報酬か
  • 最低保証等の有無
  • 解約条件
  • 所有者変更時の承継
  • 運用実績

などを確認します。

またO&Mについても、

定期点検。

故障対応。

監視。

部品交換。

緊急対応。

などの範囲と費用を確認します。

一棟マンションで、

「管理会社はどこか?」

を見るのと似ていますが、系統用蓄電池では運用者の能力が直接収益に影響するため、さらに重要な項目になります。

 

ポイント⑧ 想定利回りではなく「実際のキャッシュフロー」を見る

投資家にとって最も気になるのが収益です。

販売資料に、

想定利回り12%

想定利回り15%

などと書かれている案件もあるでしょう。

しかし重要なのは、

その数字がどのような前提から作られているのか

です。

確認したいのは、

年間売上

から、

アグリゲーター報酬。

O&M。

電気料金。

保険。

地代。

固定資産税等。

設備修繕費。

その他管理費。

を差し引いた後に、いくら残るのかです。

すでに稼働している案件なら、

想定値より実績値を重視

したいところです。

月次の収益実績があれば、

市場別収益。

季節変動。

稼働率。

停止期間。

なども確認できます。

 

ポイント⑨ 市場収益の前提|過去の実績が将来も続くとは限らない

ここは系統用蓄電池DDの中でも非常に重要です。

系統用蓄電池の収益には、

需給調整市場

卸電力市場

容量市場等

が関係します。

しかし市場価格や制度は変化します。

経済産業省の分析でも、需給調整市場について将来の約定価格・約定率を見通すことが難しく、収益見通しには不確実性があると指摘されています。

実際、2025年度にも市場環境は変化しており、2024年度と2025年4~9月を比較すると、系統用蓄電池の複合商品の平均約定単価は31.39円/ΔkW・hから22.93円/ΔkW・hへ、三次②では330.07円から58.65円へ変化しています。制度変更や募集量変更等も影響しているため、単純比較はできませんが、過去の高収益をそのまま将来へ延長することが危険だと分かります。

したがって、

現在の実績

だけでなく、

収益が20%下がった場合

30%下がった場合

などの感度分析も行いたいところです。

 

ポイント⑩ 補助金・出口戦略|将来売れるかまで確認する

最後は入口と出口です。

完成済み蓄電所が補助金を利用して建設されている場合には、

どの補助金を利用したのか

を確認します。

国は系統用蓄電池について継続的に導入支援を行っており、2025年度予算でも系統用蓄電システムの導入支援に400億円の複数年度予算を措置しています。

ただし、補助金を利用した設備には制度ごとの条件があります。

したがって完成物件を購入するときには、

  • 補助事業者は誰か
  • 交付額
  • 補助対象設備
  • 財産管理期間
  • 売却・譲渡時の手続き
  • 報告義務
  • 所有者変更時の扱い

などを確認します。

そして投資家としてもう一つ考えたいのが、

将来、この蓄電所を誰に売るのか?

です。

一棟マンションなら中古売買市場がすでに確立しています。

一方、系統用蓄電所の二次流通市場はこれから形成されていく段階です。

5年後、10年後には、

土地価値。

系統連系の価値。

SOH。

残存保証。

残存借地期間。

収益実績。

市場制度。

などが売却価格を左右すると考えられます。

つまり、

購入時のDDは、そのまま将来売却時のDDにもなる

ということです。

 

10項目を一覧にすると

投資家が最初に見るチェックリストとしては、次のように整理できます。

No. DD項目 特に確認したいこと
1 売買対象 土地・設備・契約・SPCのどれを取得するか
2 土地 所有権/借地、境界、法令、担保等
3 系統 連系状況、契約名義、承継方法
4 設備 メーカー、出力、容量、PCS、EMS
5 劣化 SOH、充放電・故障履歴
6 保証 メーカー・EPC保証と承継可否
7 運用 アグリゲーター、O&M契約
8 収支 売上ではなく実質キャッシュフロー
9 市場 市場価格・制度変更への耐性
10 補助金・出口 処分条件、将来売却、残存価値

この10項目が揃ってくると、

「利回りが高そうだから買う」

から、

「事業全体を確認して投資する」

へ判断の精度が上がります。

 

さらに重要なのが「資料が揃っているか」

DDを行おうとしても、

必要な資料そのものが売主から出てこない

場合があります。

これは注意したいポイントです。

完成済み案件なら、少なくとも、

土地関係資料。

系統関係資料。

設備仕様書。

EPC契約・完成図書。

メーカー保証書。

試運転・検査記録。

アグリゲーター契約。

O&M契約。

保険証券。

補助金関係資料。

運転開始済みなら収益実績。

などが整理されていることが望ましいでしょう。

むしろ、

「DD資料がきちんと整理されているか」自体が、案件の管理品質を見る一つの材料

になると思います。

 

DDで問題が見つかったら購入をやめる?

DDは、

「問題のない物件を探す作業」

だけではありません。

問題を発見したうえで、

価格へ反映する

売主に是正してもらう

契約条件を変更する

一定金額を留保する

保証条項を設ける

など、リスクを取引条件へ反映するための調査でもあります。

例えば、

メーカー保証の承継ができない。

SOHが想定より低い。

アグリゲーター契約の条件が悪い。

土地賃貸借の残存期間が短い。

という問題が見つかったとしても、それだけで必ず購入中止になるわけではありません。

重要なのは、

そのリスクを購入価格が適切に織り込んでいるか

です。

これは中古一棟マンションの購入と同じ考え方です。

 

不動産会社だけではDDできない

弊社のような不動産会社にとって、ここは重要な点です。

土地については、

登記。

境界。

接道。

都市計画。

契約。

決済。

など、これまでの不動産取引の経験を活かせます。

しかし、

蓄電池セルの状態。

PCS性能。

EMS。

系統運用。

電力市場。

などは不動産会社だけで判断する領域ではありません。

そのため完成済み蓄電所の取引では、

不動産会社

弁護士

税理士・会計士

EPC・電気設備技術者

電力・系統の専門事業者

などが連携して確認することが重要になるでしょう。

 

一棟マンションと同じ感覚で買ってはいけない。しかし考え方は似ている

完成済み系統用蓄電池は、一棟マンションなどの収益不動産とは全く違う投資です。

一棟マンションでは、

賃料

が収益源です。

系統用蓄電池では、

電力市場

が収益源です。

一方で投資判断の基本はよく似ています。

一棟マンションなら、

土地+建物+入居者+管理会社+賃料

を見る。

系統用蓄電池なら、

土地+設備+系統+アグリゲーター+市場収益

を見る。

つまり、

収益を生み出す仕組みを一つずつ分解して確認する

という考え方は同じです。

 

高利回りより「下振れしたときにどうなるか」を見る

系統用蓄電池の販売資料を見ると、収益不動産より高い想定利回りが示されることがあります。

そこで、

想定利回り15%だから、一棟マンションの4%より魅力的

と考えたくなるかもしれません。

しかし、利回りが高いのには理由があります。

市場収益の変動。

設備劣化。

制度変更。

アグリゲーター。

中古市場。

こうした不確実性があります。

国の検討資料でも、市場価格の不安定さや制度変更によって固定費回収の予見性が低いことが、系統用蓄電池事業のファイナンス上の課題として指摘されてきました。

だからこそ投資家が確認したいのは、

最高の場合にいくら儲かるか

だけではなく、

想定より収益が下がっても事業を継続できるか

です。

 

投資家向けDDでは3つのシナリオを作りたい

完成済み蓄電所を検討する場合には、

① ベースケース

販売資料等を検証した現実的な想定。

② アップサイドケース

市場環境や運用が好調だった場合。

③ ダウンサイドケース

市場収益低下、設備費増加、停止等が発生した場合。

の3つを比較すると分かりやすいと思います。

そしてそれぞれについて、

年間CF。

自己資金利回り。

DSCR。

IRR。

投資回収期間。

出口価格。

などを比較する。

ここまで行うと、系統用蓄電池を「高利回り商品」ではなく、一つのインフラ事業投資として評価できるようになります。

 

まとめ|完成済みだからこそDDが重要

完成済みの系統用蓄電池には、

土地から開発する必要がない。

系統連系まで進んでいる。

工事費が概ね確定している。

早期に運用を開始できる。

といったメリットがあります。

そのため、土地から系統用蓄電池を開発するよりも、投資家にとって分かりやすい投資対象になる可能性があります。

しかし、

「完成しているから安心」

ではありません。

購入前には、

何を買うのか

土地はどうなっているのか

系統契約は承継できるのか

設備はどのような状態か

保証は残っているか

誰が運用するのか

実際にいくら収益が残るのか

市場環境が変わっても成立するのか

補助金上の制約はないか

将来売却できるのか

まで確認する必要があります。

完成済み系統用蓄電池は、

「土地+蓄電池を買う投資」ではなく、「電力市場から収益を生み出す事業資産を取得する投資」

と考えると分かりやすいでしょう。

弊社ではこれまで一棟マンション、一棟ビル、土地などの不動産売買を取り扱ってきました。

現在はその経験を活かしながら、系統用蓄電池についても、土地、権利付き土地、建設中案件、完成済み蓄電所まで取り扱える体制づくりを進めています。

完成済み蓄電所についても、不動産部分だけを見るのではなく、EPC・電気設備・系統・運用等の専門事業者と連携しながら、

「何を購入するのか」

「どこにリスクがあるのか」

を整理したうえで、投資家様・事業会社様へご紹介していくことが重要だと考えています。

完成済み系統用蓄電池を購入したい投資家様・事業会社様、また完成物件の売却を検討されている事業者様も、お気軽にご相談ください。

 

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