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低圧系統用蓄電池とは?これから広がる新しい投資市場を解説
近年、系統用蓄電池への投資が注目されていますが、その中でも新たな選択肢として関心が高まりつつあるのが「低圧系統用蓄電池」です。
先日、系統用蓄電池を取り扱う同業の不動産会社様と意見交換をした際にも、低圧系統用蓄電池について話題になりました。
「高圧より少ない投資額で参入できるので広がるのではないか」
という期待がある一方で、
「本当に投資商品として成立するのか」
「市場参加者が増えた後も収益性を維持できるのか」
「低圧案件が増えることで、現在の高圧系統用蓄電池市場にはどのような影響があるのか」
など、慎重な意見もありました。
私自身も、現時点で「低圧系統用蓄電池は間違いなく普及する」と断定する段階ではないと考えています。
だからこそ今回は、期待だけではなく課題やリスクも含めて、低圧系統用蓄電池は本当に投資対象になり得るのかという視点から考えてみたいと思います。

そもそも低圧系統用蓄電池とは?
系統用蓄電池とは、電力系統に直接接続し、電気を充電・放電することで電力需給の調整などを行う設備です。セミナー資料でも、電力価格が安い時間帯に系統から電気を購入して蓄え、価格が高い時間帯に放電するという基本的な事業モデルが説明されています。
一般に「低圧系統用蓄電池」と呼ばれているものは、50kW未満の低圧区分で系統へ接続する比較的小規模な蓄電池設備を指して使われています。
現在市場でよく見かけるのは、連系出力を49.5kW程度としたモデルです。
東京電力パワーグリッドでも、供給区分について低圧を50kW未満、高圧・特別高圧を50kW以上として案内しています。
一方、これまで系統用蓄電池市場の中心となってきた高圧案件では、2MW/8MWh程度の規模も多く、セミナー資料でも市場で流通する案件としてこのクラスが紹介されています。
つまり、低圧系統用蓄電池は、現在主流の高圧案件をそのまま小さくしたものというよりも、より小規模・分散型の新しい蓄電池事業モデルとして考えた方が分かりやすいでしょう。
なぜ今、低圧系統用蓄電池が注目されているのか?
大きな理由の一つが、アグリゲーションを利用した電力市場への参加です。
2026年4月以降、50kW未満の低圧リソースについても、アグリゲーターを通じて需給調整市場などへの参加を目指す事業モデルが広がり始めています。実際に49.5kWの蓄電池を複数配置し、それらを束ねて市場運用するサービスも登場しています。
低圧蓄電池1台だけでは規模が小さいため、
低圧蓄電池A
+低圧蓄電池B
+低圧蓄電池C
+……
というように、多数の設備をアグリゲーターがまとめ、一つの大きな調整力として電力市場へ参加させる考え方です。
この「小さな設備を大量に束ねる」という仕組みが、低圧系統用蓄電池ビジネスの重要なポイントになります。
高圧系統用蓄電池との違い
投資家にとって最も分かりやすい違いは、投資規模です。
現在流通している高圧系統用蓄電池では、2MW/8MWhクラスで数億円規模になるケースがあります。セミナー資料では、同クラスについて約6億円程度が一般的という事例が紹介されていました。
一方、民間事業者が現在販売・試算している49.5kWクラスの低圧系統用蓄電池では、2,000万円前後から2,000万円台を一つの投資モデルとして掲げる例があります。
もちろん設備容量や土地取得費、工事費、連系条件などによって大きく変わりますので、これを「相場」と断定することはできません。
それでも、
数億円規模の高圧案件に対して、数千万円規模から検討できる可能性がある
という点は、投資家層を広げる大きな要因になるでしょう。
土地の考え方も変わる可能性があります
現在の高圧系統用蓄電池では、200~400坪程度を目安として土地を探すケースが多くあります。弊社でも、系統用蓄電池用地の一次査定ではこの程度の面積を一つの目安にしています。
低圧化によって設備規模が小さくなれば、当然、必要とする土地面積も小さくできる可能性があります。
これは不動産会社として非常に興味深いポイントです。
これまで、
「面積が小さくて高圧蓄電池には使えない」
として対象外になっていた土地にも、新たな可能性が出てくるかもしれません。
一方で、小さい土地ならどこでも設置できるわけではありません。
系統条件、接道、消防、周辺環境などについては低圧でも確認が必要です。
低圧なら系統連系が簡単なのか?
これも期待されているポイントの一つです。
一般的に50kW未満の低圧設備は、高圧設備と比べて系統への影響が限定的とされており、過去の資源エネルギー庁資料でも、低圧50kW未満では高圧連系に比べて接続契約前の接続検討が不要とされる一般的な取扱いが示されています。
そのため、
高圧案件より連系手続きや事業化期間を短縮できるのではないか
という期待があります。
しかし、
「低圧だから必ずすぐ連系できる」
という意味ではありません。
地域の配電設備状況や連系希望地点などによって追加工事が必要になる可能性があります。
低圧でも、最終的には一般送配電事業者への正式な確認が必要です。
投資対象として本当に成立するのか?
ここが一番重要なところです。
現時点では私は、
「有望な可能性はあるが、まだ実績を見極める必要がある新しい投資市場」
と考えるのが適切だと思います。
現在公表されている民間のモデルでは、49.5kWクラスについて初期投資1,800~2,700万円程度、条件によって税引前IRRが一桁台から10%台になる試算なども出ています。
しかし、これは一定の前提条件に基づくシミュレーションです。
重要なのは、
「利回り○%」という結果より、その数字がどのような前提で算出されているのか
です。
例えば、電力市場からの収益予測、アグリゲーターへの手数料、蓄電池の劣化、保守費用、市場制度変更などによって実際の収益は変わります。
したがって、収益シミュレーションをそのまま将来収益として考えるのは慎重であるべきでしょう。
低圧蓄電池の最大のポイントは「アグリゲーター」?
高圧以上に重要になる可能性があるのが、アグリゲーターの存在です。
低圧設備は一つ一つが小さいため、単体で市場へ参加するのではなく、多数の設備を束ねて運用する仕組みが重要になります。
つまり投資家は、
「どこの蓄電池メーカーを使うか」
だけでなく、
「誰がこの設備を運用するのか」
を確認する必要があります。
例えば、
- どの市場へ参加するのか
- 収益配分はどうなるのか
- 運用実績はあるのか
- 契約期間は何年か
- 手数料はいくらか
- 将来アグリゲーターを変更できるのか
などです。
低圧系統用蓄電池では、設備そのものより運用スキームが投資成果を左右する割合が大きくなる可能性があります。
また低圧設備が増えた場合のアグリゲーターが対応できるか?などの懸念もあります。
本当に低圧系統用蓄電池は広がるのか?
これについては、先日の同業者との意見交換でも賛否が分かれました。
私は「広がる可能性は十分あるものの、急速に全国へ普及すると断定するのはまだ早い」と考えています。
普及を後押しする要因としては、投資額の小型化、設置面積の縮小、分散配置のしやすさ、アグリゲーション技術の進展などがあります。
一方で、慎重に見る理由もあります。
例えば、
多数の低圧設備が同じ地域に集中すれば、結果的に配電系統への負担が増える可能性があります。
また市場参加者が急増すれば、現在想定している収益水準が維持される保証もありません。
経済産業省でも2026年に入り、系統用蓄電池を含む発電等設備の申込み急増を背景として、迅速な系統連系や系統混雑への対応について継続的な検討が行われています。
低圧だから系統問題と無関係、とは考えない方がよいでしょう。
低圧が普及すると高圧系統用蓄電池は不要になる?
ここも興味深いポイントです。
私は、低圧と高圧は完全な競合関係にはならないと考えています。
高圧系統用蓄電池は、一つの地点で大きな出力・容量を確保できます。
一方、低圧系統用蓄電池は、小さな設備を多数分散して設置するモデルです。
不動産で例えるなら、
高圧系統用蓄電池が
「一棟収益マンション」
だとすれば、
低圧系統用蓄電池は
「区分マンションを多数運用する仕組み」
に少し近いかもしれません。
投資額、管理方法、出口戦略、運用方法が異なります。
したがって、
高圧か低圧かという二者択一ではなく、それぞれ異なる投資市場として形成されていく可能性
があります。
むしろ高圧市場にプラスになる可能性も
低圧系統用蓄電池が普及すると、
これまで数億円規模の投資が難しかった法人・投資家も、蓄電池事業へ参入できるようになる可能性があります。
つまり、
低圧で蓄電池投資を経験
↓
事業性を確認
↓
追加投資
↓
高圧系統用蓄電池へ
という流れも考えられます。
これは、不動産投資で
区分マンション → 一棟収益物件
へステップアップする投資家の動きにも似ています。
その意味では、低圧系統用蓄電池市場の拡大が、最終的に高圧市場への投資家層を広げる可能性もあるでしょう。
低圧だから「低リスク」とは限らない
ここは投資家の方に特にお伝えしたいポイントです。
投資金額が小さいことと、投資リスクが小さいことは同じではありません。
低圧系統用蓄電池にも、
- 電力市場価格の変動
- 制度変更
- アグリゲーターリスク
- バッテリー劣化
- メーカー保証
- 系統連系
- 工事費
- 保守管理
- 売却時の流動性
などのリスクがあります。
市場自体が若いため、中古市場や二次流通がどの程度形成されるのかも、まだ確認していく必要があります。
収益不動産のように「売却査定を取ればある程度出口価格が分かる」という市場には、まだなっていません。
2027年にはJC-STAR★1への対応も重要に
低圧系統用蓄電池については、設備品質やサイバーセキュリティ等への対応も無視できません。
先日受講したセミナーでは、JC-STAR★1について、低圧では2027年10月からの適用予定として説明を受けました。
高圧では2027年4月、低圧では2027年10月というスケジュールであり、今後販売される蓄電池設備については、こうした制度対応も投資判断材料になっていくと考えられます。
制度開始前だからこそ、設備価格だけでなく、
「今後の制度に対応できる設備なのか」
という視点も必要になるでしょう。
投資家が確認したいポイント
低圧系統用蓄電池を投資対象として検討するなら、少なくとも設備価格、土地・賃借条件、系統連系条件、工事負担金、蓄電容量、メーカー・保証、アグリゲーター、収益シミュレーション、O&M費用、設備更新費、JC-STAR等の制度対応、売却時の出口戦略を確認したいところです。
特に、
想定年間収益はいくらか?
だけではなく、
その収益がどの市場から、どの前提で生まれるのか?
まで確認することが重要です。
低圧系統用蓄電池は「新しい投資市場」になるのか
結論として、低圧系統用蓄電池には非常に興味深い可能性があります。
高圧系統用蓄電池に比べて投資額を抑えられる可能性があり、必要な土地も小さくできるため、これまで蓄電池投資に参加できなかった企業や投資家にも市場が広がる可能性があります。
一方で、
市場実績・収益性・制度・出口市場については、まだ検証が必要な段階です。
したがって、
「これから間違いなく儲かる投資」
として紹介するより、
「これから形成される可能性がある新しいインフラ投資市場」
として注目していく方が適切だと考えています。
レジスタ合同会社でも今後の動向を注視します
レジスタ合同会社では現在、高圧系統用蓄電池を中心に、土地情報の収集、適地調査、系統連系申込、権利付き土地や完成済み蓄電池施設の売買までを見据えた取り組みを進めています。
低圧系統用蓄電池についても、今後投資商品として市場が形成されていくのであれば、土地活用や投資家様への新たな選択肢になる可能性があります。
一方で、現段階では期待だけを先行させず、実際の運用実績や制度変更、アグリゲーターの収益実績などを確認しながら情報を収集していきたいと考えています。
「低圧系統用蓄電池に興味がある」
「高圧と低圧、どちらを検討すべきか知りたい」
「系統用蓄電池への投資を検討している」
といった企業様・投資家様からの情報交換、ご相談も歓迎しております。
まとめ
低圧系統用蓄電池は、系統用蓄電池市場を大きく変える可能性を持った新しい分野です。
投資額を抑えて参入できる可能性があることは大きな魅力ですが、だからといって高圧案件より簡単、安全、確実というわけではありません。
むしろ市場が形成され始めた今だからこそ、
収益性・制度・設備・アグリゲーター・系統・出口戦略を総合的に確認すること
が重要です。
低圧が高圧市場を奪うのか。それとも、蓄電池投資市場そのものを広げる入口になるのか。
この点については、今後の実績を見ながら継続して情報発信していきたいと思います。
レジスタ合同会社
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