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系統用蓄電池に中古市場は生まれるのか?完成後の売却と出口戦略を考える

系統用蓄電池への投資を検討する際、多くの方が最初に注目するのは、

「どのくらい収益が出るのか」

「想定利回りは何%なのか」

「初期投資はいくら必要なのか」

といった点ではないでしょうか。

もちろん、どれも重要です。

しかし、不動産投資を扱う立場から見ると、もう一つ非常に気になることがあります。

それが、

「将来、この蓄電所を売却できるのか?」

という出口戦略です。

一棟マンションやアパートなどの収益不動産では、

購入 → 賃貸運用 → 売却

という流れが一般的です。

一方、国内の系統用蓄電池市場はまだ比較的新しく、完成後に一定期間運用された蓄電所の売買市場については、収益不動産ほど確立されているとは言えません。

では今後、系統用蓄電池にも「中古市場」が生まれるのでしょうか。

今回は、系統用蓄電池を一つの投資対象として考え、完成後の売却、中古蓄電所の価値、そして投資時点から考えておきたい出口戦略について解説します。

 

系統用蓄電池にも「入口」と「出口」がある

系統用蓄電池への投資では、

土地を確保する

系統連系を進める

EPCによって蓄電所を建設する

運転を開始する

市場から収益を得る

という流れに注目しがちです。

しかし、投資である以上、その先があります。

例えば10年後に、

そのまま保有を続けるのか

設備を更新して運用を継続するのか

第三者へ蓄電所を売却するのか

という判断が必要になるでしょう。

これは収益不動産とよく似ています。

不動産投資でも購入時の利回りだけでなく、

「10年後にいくらで売れるのか」

「次に誰が買うのか」

という出口を考えて購入します。

系統用蓄電池についても、今後投資商品として市場が成熟するほど、入口の利回りだけでなく出口まで考えることが重要になると考えています。

 

すでに「完成済み蓄電所」は売買されている

まず整理しておきたいのは、

完成した系統用蓄電所そのものを投資案件として売買する市場はすでに存在する

ということです。

系統用蓄電池事業では、

①土地

②系統連系を進めた権利付き土地

③EPC施工中の案件

④完成した蓄電所

など、事業の進捗によって案件の状態が変わります。

当然、完成に近づくほど、それまでに投入された設備費、工事費、系統関連費用なども大きくなります。

投資家から見れば、土地から自分で開発するより、

「完成して運転開始できる蓄電所を購入したい」

というニーズもあります。

ここまでは、新築マンションや新築一棟収益物件を購入する感覚に比較的近いでしょう。

今回考えたいのは、そのさらに先です。

一度運転を開始した系統用蓄電池が、数年後に再び売買される市場が形成されるのか。

ここが「中古市場」という考え方です。

 

系統用蓄電池の中古市場は生まれるのか?

現時点で将来を断定することはできませんが、弊社では中古蓄電所の売買市場が形成される可能性は十分にあると考えています。

理由の一つは、系統用蓄電池が投資対象として保有される資産だからです。

投資家や事業会社が永遠に同じ蓄電所を所有するとは限りません。

例えば、

  • 投資資金を回収したい
  • 別の蓄電所へ資金を振り向けたい
  • ポートフォリオを入れ替えたい
  • 事業から撤退したい
  • ファンドの運用期間が終了する
  • 設備更新前に売却したい

といった理由で売却ニーズが発生することは十分考えられます。

一方では、

「開発リスクを取らず、稼働実績のある蓄電所を購入したい」

という投資家が現れる可能性があります。

売りたい人と買いたい人が増えれば、そこに二次流通市場が生まれます。

 

中古の蓄電所は何を基準に評価される?

ここが収益不動産との大きな違いであり、今後非常に興味深い部分です。

例えば一棟マンションなら、

  • 土地価格
  • 建物価格
  • 築年数
  • 賃料収入
  • 入居率
  • NOI
  • 修繕履歴
  • 周辺の取引事例
  • 利回り

などから価格を検討します。

では、稼働開始から5年経過した系統用蓄電所ならどうでしょうか。

おそらく中古蓄電所では、単なる土地+設備の価格ではなく、

「今後その蓄電所がどれだけキャッシュフローを生み出せるのか」

が重要な評価軸になると考えられます。

① 稼働実績・収益実績

新設する蓄電所の場合、投資判断に使用するのは基本的に将来予測です。

一方、すでに数年間稼働している蓄電所なら、

実際の収益実績

を見ることができます。

例えば、

「年間いくら売上があったのか」

「想定していた収益と実績にどの程度差があったのか」

「アグリゲーターへの報酬を差し引いていくら残ったのか」

「維持管理費はいくらだったのか」

といった情報です。

これは中古蓄電所ならではのメリットになり得ます。

収益不動産でいうレントロールや過去の収支実績に近い資料が、将来は中古蓄電所売買でも重要になるのではないでしょうか。

② 蓄電池の劣化状態

一方、中古だからこその大きな問題があります。

それが蓄電池の劣化です。

マンションやビルも築年数とともに劣化しますが、蓄電池も使用によって性能が変化します。

そのため中古蓄電所では、

  • 稼働年数
  • 充放電回数
  • 使用方法
  • 残存容量
  • SOH(State of Health)
  • メーカー保証
  • 保証残存期間
  • 過去の故障・修理履歴

などが重要になると考えられます。

仮に同じ2MW/8MWhとして建設された蓄電所でも、5年間どのように運用されたかによって設備の状態が同じとは限りません。

つまり、将来の中古蓄電所では、

「築何年」だけでは設備価値を判断できない

ということです。

③ PCSなど周辺設備の状態

確認するのは蓄電池セルだけではありません。

系統用蓄電池には、

  • PCS
  • EMS
  • 変圧器
  • 受変電設備
  • 空調設備
  • 消防・安全設備
  • 通信設備

など、さまざまな設備があります。

これらの残存耐用年数や保守状況、更新費用も中古価格に影響するでしょう。

例えば購入後すぐに大規模な設備更新が必要なのであれば、買主はその費用を購入価格に反映して考える必要があります。

収益不動産でいう、

「購入後すぐに大規模修繕が必要か」

という考え方に近い部分です。

④ 系統連系の価値

系統用蓄電池の中古市場で、不動産以上に重要になる可能性があるのが系統連系です。

新たな蓄電所を開発しようとすれば、

土地を探し、系統条件を確認し、接続検討を行い、工事負担金を負担し、連系まで待つ必要があります。

それに対して既存の蓄電所は、すでに系統へ接続して稼働しています。

新規案件の連系が難しい地域や、連系まで長期間を要する地域では、

「すでに連系していること自体」に大きな価値が生まれる可能性があります。

これは中古蓄電所の価格形成を考えるうえで、非常に重要なポイントだと思います。

単純に、

中古だから安い

とは限らないのです。

設備は古くなっていても、系統接続や立地、事業実績などに価値があれば、高く評価される可能性があります。

⑤ 土地を所有しているか、借りているか

もう一つ重要なのが土地です。

系統用蓄電池には、

土地所有権付きの蓄電所

だけでなく、

借地上の蓄電所

も考えられます。

所有権付きであれば、土地そのものが資産として残ります。

一方、借地の場合には、

  • 残存契約期間
  • 地代
  • 更新条件
  • 事業譲渡時の取り扱い
  • 蓄電所売却時に契約を承継できるか
  • 契約終了時の原状回復

などが中古売買時の重要な確認事項になります。

今後、借地による系統用蓄電池が増えていけば、

「借地権付き収益不動産」に近い考え方の蓄電所売買

が形成される可能性もあります。

土地所有者は地代を受け取り続け、蓄電所事業だけが投資家間で売買される。

このような市場が生まれるかどうかにも注目しています。

レジスタの賃貸サイトに系統用蓄電池用地の賃貸のページを解説しましたのでこちらもご覧ください。
▶レジスタの賃貸サイトへ

⑥ アグリゲーターとの契約

中古蓄電所では、設備だけでなく運用契約も確認する必要があります。

系統用蓄電池の収益は、卸電力市場、需給調整市場、容量市場など複数の市場を活用して得ることが考えられます。

実際の市場取引・運用ではアグリゲーターが重要な役割を担います。

そのため売買時には、

「現在どのアグリゲーターと契約しているのか」

「契約期間はいつまでなのか」

「所有者変更後も契約を引き継げるのか」

「報酬体系はどうなっているのか」

といった点も確認する必要が出てくるでしょう。

同じ設備でも、運用方法によって収益実績が異なる可能性があるからです。

⑦ 補助金を利用している場合の処分制限

以前、系統用蓄電池の補助金についてご紹介しましたが、中古市場を考えるうえでも補助金は重要です。

国や自治体の補助を受けて導入した設備では、一定期間の財産処分について制限や手続きが設けられている場合があります。

そのため、

「補助金を使って建設した蓄電所だから、いつでも自由に第三者へ売却できる」

とは限りません。

将来的な売却を考えている投資家は、補助金の金額だけではなく、

売却・譲渡・担保設定などにどのような条件があるのか

まで確認しておく必要があります。

入口で得られるメリットが、出口の自由度に影響する可能性もあるということです。

 

中古蓄電所の「デューデリジェンス」が重要になる

中古市場が形成されれば、今後重要になるのがDD(デューデリジェンス)です。

収益不動産でも購入前に、

権利関係、建物、賃貸借契約、収益、修繕、法令などを調査します。

これをDDと呼んでおります。

中古の系統用蓄電池では、それに加えて、

土地・法務DD

設備・技術DD

系統DD

収益DD

契約DD

という、より複合的な確認が必要になると考えられます。

不動産会社だけで完結するのではなく、

EPC、電気技術者、メーカー、アグリゲーター、弁護士、税理士などとの連携

が重要になる分野でしょう。

 

中古蓄電所は新設より投資しやすくなる可能性も

中古と聞くと、

「古い設備だからリスクが高い」

というイメージを持つかもしれません。

しかし、必ずしもデメリットだけではありません。

例えば完成済み・稼働済みであれば、

土地取得リスクがない

系統連系まで待つ必要がない

工事負担金が想定以上になるリスクをすでに通過している

EPC工事が完了している

実際の運用実績を確認できる

といったメリットがあります。

新規開発では「これからどうなるか」を予測して投資します。

中古では「これまでどうだったか」を確認して投資できます。

この違いは大きいでしょう。

将来的には、

開発リスクを取って高いリターンを狙う投資家

と、

完成・稼働済み案件を購入して安定運用を目指す投資家

というように、投資家層が分かれていく可能性も考えられます。

 

ただし「中古だから安い」とは限らない

自動車などの中古市場では、新品より中古品の方が安いことが一般的です。

しかし系統用蓄電池は、単純な設備売買ではありません。

そこには、

土地

設備

系統連系

運用実績

各種契約

将来のキャッシュフロー

があります。

したがって、設備価格だけを減価させて中古価格を計算するのは難しいでしょう。

例えば新規の系統連系が非常に難しい地域であれば、

設備は5年経過していても、既存の連系済み蓄電所に希少価値が生まれる

ということも考えられます。

中古蓄電所は「モノの中古価格」というより、収益事業の価値を売買する市場として考えた方が近いのではないでしょうか。

 

収益不動産と中古蓄電所の違い

収益不動産と比較すると、系統用蓄電池の特徴が分かりやすくなります。

収益不動産では、

入居者から賃料を受け取る

NOIを算出する

利回り・将来収益から価格を判断する

という考え方があります。

系統用蓄電池でも将来的には、

市場運用による収入

運営費・アグリゲーター報酬・修繕等を控除

将来キャッシュフローを予測

IRR・期待利回りから価格を判断する

という評価方法が重要になるでしょう。

一方で、蓄電池には設備劣化があり、市場収益も固定賃料とは性質が異なります。

そのため、収益不動産とまったく同じ評価方法を当てはめることはできません。

 

購入時から「何年後に誰へ売るか」を考える

これから系統用蓄電池へ投資する方には、ぜひ入口の段階から出口についても考えていただきたいと思います。

例えば、

5年程度で売却するのか

10年以上保有するのか

設備更新まで運用するのか

更新してさらに長期間保有するのか

によって、選ぶ案件も変わってくる可能性があります。

短期~中期で売却を考えるのであれば、

  • 将来買い手が付きやすい立地か
  • 設備メーカーの信頼性
  • 保証期間
  • SOH(バッテリーの健康状態)
  • 系統条件
  • 土地所有形態
  • 契約承継
  • 補助金の処分制限

などを購入時から確認する必要があります。

つまり、

「高い利回りだから買う」だけではなく、「将来売りやすい蓄電所なのか」という視点も必要になる

ということです。

これは収益不動産投資と非常によく似ています。

 

将来は「中古系統用蓄電所」の仲介市場も?

系統用蓄電池の建設が全国で進めば、当然ながら数年後には稼働年数の異なる蓄電所が大量に存在することになります。

そうなれば、

新設案件

稼働1~3年程度の築浅案件

中長期間稼働した案件

設備更新を控えた案件

など、さまざまな状態の蓄電所が市場に出てくる可能性があります。

その際には、売主と買主の間で、

「設備状態をどう評価するか」

「将来収益をどう予測するか」

「いくらなら適正価格なのか」

を調整する役割も必要になるでしょう。

ここには、収益不動産仲介で培われてきた考え方を応用できる部分があると感じています。

 

不動産会社が中古蓄電所市場に関わる意味

系統用蓄電池は電力設備ですので、技術的な評価は専門家が行う必要があります。

一方、取引対象には土地や借地契約が含まれ、事業そのものの売買や投資家とのマッチングも必要になります。

つまり、

不動産
×
電力
×
設備
×
金融・投資

が交わる市場です。

弊社では現在、土地情報の収集だけでなく、

土地 → 系統連系 → 権利付き土地 → EPC → 完成蓄電所

までを見据えた取り組みを進めています。

そしてその先には、

完成蓄電所 → 運用 → 中古蓄電所として再売却

という市場も生まれてくるのではないかと考えています。

不動産会社として、土地の入口だけではなく、将来的な出口まで関われる体制をつくることは、系統用蓄電池事業に取り組むうえで重要だと考えています。

 

まとめ|系統用蓄電池も「買って終わり」ではない

系統用蓄電池への投資では、現在は新規開発や完成物件の購入に注目が集まっています。

しかし、全国で蓄電所が増えていけば、その次に生まれてくる可能性があるのが中古市場・二次流通市場です。

そのとき重要になるのは、

設備が何年経過しているかだけではありません。

稼働実績、収益実績、蓄電池の劣化状態、メーカー保証、PCS等の設備状態、系統連系、土地所有形態、アグリゲーター契約、補助金による制約、そして将来のキャッシュフローなどを総合的に評価する必要があります。

そして投資家にとって重要なのは、

購入時点から出口を考えること。

これは収益不動産でも系統用蓄電池でも同じです。

「いくらで買えるか」

「何%で回るか」

だけでなく、

「数年後、この蓄電所を誰が、いくらで買ってくれる可能性があるのか」

まで考えて投資する。

系統用蓄電池が本格的な投資市場へ成長していくためには、この出口市場の形成が非常に重要になるのではないでしょうか。

レジスタ合同会社では、系統用蓄電池について用地の売買・賃貸、系統連系、権利付き土地、EPC・施工会社との連携、完成済み蓄電所の仲介までを視野に取り組みを進めています。

今後、中古蓄電所の流通が本格化すれば、完成後の売却や買い替え、投資家間の二次流通についても、不動産会社として取り組める分野になると考えています。

 

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