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系統用蓄電池の補助金は利回りをどう変える?投資額・IRRへの影響を考える
系統用蓄電池への投資を検討している方にとって、気になるポイントの一つが「補助金」ではないでしょうか。
系統用蓄電池は、土地を確保すればすぐに事業を始められるものではありません。
土地取得費または賃借費用に加えて、
蓄電池設備、PCS、受変電設備、造成工事、電気設備工事、系統連系に伴う工事負担金など、さまざまな費用が必要になります。
そのため、事業規模によっては大きな初期投資が必要です。
一方、国や自治体では系統用蓄電池の導入を支援する補助金・助成金制度が設けられています。
2026年にも、国では系統用蓄電システム等を対象とする支援事業が実施されており、東京都でも東京電力管内の電力系統に直接接続する大規模蓄電池を対象とした助成事業が実施されています。
では、
「補助金を利用すると、系統用蓄電池の利回りはどのくらい変わるのか?」
「IRR(内部収益率)にはどのような影響があるのか?」
今回は、系統用蓄電池を一つの投資対象として考え、補助金が投資採算に与える影響について解説します。

そもそも系統用蓄電池にはどのような費用がかかる?
補助金の効果を考える前に、まず系統用蓄電池への投資額について整理してみましょう。
案件によって大きく異なりますが、主な費用として、
- 土地取得費
- 蓄電池設備
- PCS
- 変圧器・受変電設備
- EMSなどの制御設備
- 造成工事
- 電気設備工事
- EPC費用
- 系統連系に伴う工事負担金
- 設計・申請費用
- その他開発費用
などがあります。
つまり、
土地価格+蓄電池価格=総投資額
ではありません。
土地価格が安くても造成費や工事負担金が高額になれば、総事業費は大きくなります。
逆に土地価格が多少高くても、造成しやすく、系統条件にも恵まれていれば、事業全体では有利になることも考えられます。
系統用蓄電池の投資判断では、まず完成・運転開始までに総額いくら必要なのかを把握することが重要です。
補助金は「売上を増やす」のではなく「投資負担を減らす」
ここが今回の記事で最も重要なポイントです。
補助金を受けたからといって、基本的には蓄電所の市場から得られる売上そのものが増えるわけではありません。
例えば、同じ設備・同じ運用条件の蓄電所であれば、
補助金なしでも、補助金ありでも、設備そのものが生み出す事業収益が自動的に増えるわけではありません。
変わるのは主に投資家側の負担額です。
つまり、
収益を増やすのではなく、収益を生み出すために必要な実質投資額を圧縮する
というのが補助金の大きな効果です。
この違いを理解しておくと、利回りやIRRへの影響も分かりやすくなります。
例えば6億円の蓄電所ならどう変わる?
ここからは分かりやすくするため、架空のモデルケースで考えてみます。
実際の補助金額は制度ごとの対象経費・補助率・上限・採択内容等によって異なるため、以下は補助制度そのものを再現した数字ではありません。
仮に、
総事業費:6億円
の系統用蓄電所があるとします。
そして運用によって、各種運営費等を差し引いた年間キャッシュフローが、
年間6,000万円
だったと仮定します。
単純計算すると、
6,000万円 ÷ 6億円=10%
です。
ここでは説明を簡単にするため、10%を投資額に対する年間キャッシュフローの割合として考えます。
補助金によって実質投資額が4億円になったら?
次に、補助対象経費に対する支援を受けた結果、仮に投資家側の実質的な負担額が、
6億円 → 4億円
になったとします。
蓄電所から得られる年間キャッシュフローが同じ6,000万円であれば、
6,000万円 ÷ 4億円=15%
となります。
つまり、
補助金なし:10%
補助金あり:15%
という違いが生まれます。
もちろん、これは補助金の効果を説明するために単純化した仮定です。
実際には税金、借入、設備劣化、運営費、補助対象経費、補助金の会計・税務上の取り扱いなどを考慮する必要があります。
しかし、同じキャッシュフローを生み出す設備でも、自己負担する投資額が変われば投資効率は大きく変わるということは分かると思います。
ただし「補助率1/3なら投資額が1/3減る」とは限らない
ここは非常に注意が必要です。
例えば、
「補助率1/3」
と聞くと、
総事業費6億円なら2億円の補助金が出る
と思ってしまうかもしれません。
しかし、補助率は通常、補助対象として認められた経費に対して適用されます。
土地代、設備費、工事費、開発費など、総事業費のすべてが同じように補助対象になるとは限りません。
さらに、
- 補助対象設備
- 補助対象経費
- 補助上限
- 設備要件
- 申請要件
- 審査・採択
などがあります。
したがって投資判断では、
「補助率○%」を見るのではなく、「総事業費○億円のうち実際にいくらが補助対象になり、最終的に自己負担額はいくらになるのか」
まで確認する必要があります。
補助金がIRRに与える影響とは?
ここでIRRについて考えてみましょう。
IRRとは「Internal Rate of Return」の略で、日本語では内部収益率と呼ばれます。
単純な表面利回りが「1年間の収益と投資額」を比較するのに対し、IRRでは、
初期投資
+
毎年のキャッシュフロー
+
保有期間
+
最終的な売却・残存価値
など、時間の経過を含めて投資効率を考えます。
そのため、系統用蓄電池のように長期間運用する投資では、IRRは非常に重要な指標になります。
補助金が入ると初期投資額が小さくなる
IRRの計算では、最初に投資する金額が大きな意味を持ちます。
例えば、
補助金なし
初期投資 ▲6億円
に対して、
補助金あり
実質初期投資 ▲4億円
となれば、その後に得られるキャッシュフローが同じでも、一般的には後者のIRRが高くなります。
つまり補助金は、
単年度の利回りだけではなく、投資期間全体の資金効率にも影響する
ということです。
投資家にとって補助金への関心が高い理由はここにあります。
借入を利用する場合はさらに考え方が変わる
実際の系統用蓄電池投資では、すべて自己資金で投資するとは限りません。
金融機関からの借入を組み合わせるケースも考えられます。
例えば、
総事業費6億円
の案件について、補助金によって必要資金が圧縮されれば、
- 自己資金を減らす
- 借入額を減らす
- 自己資金と借入の比率を変更する
といった資金計画が考えられます。
借入額が変われば当然、
支払利息
元本返済
年間キャッシュフロー
DSCR
自己資金に対するIRR
なども変わります。
したがって、本格的な投資判断では、
物件そのものの収益性
と、
投資家が実際に投入する自己資金に対する収益性
を分けて考えることも重要です。
これは収益不動産投資と非常によく似ています。
補助金ありの案件は高く売れるのか?
ここからは、不動産会社として非常に興味深いポイントです。
例えば市場に、
A:補助金を使わずに完成した蓄電所
と、
B:補助金を利用して完成した蓄電所
があったとします。
設備容量や収益力が同じなら、Bの方が開発者の投資負担は小さくなっている可能性があります。
しかし、
「補助金を受けているから、その分だけ高く売れる」
とは限りません。
買主が見るのは、
「売主がいくらで建設したのか」
だけではなく、
「自分がいくらで買って、今後いくらのキャッシュフローを得られるのか」
だからです。
つまり、補助金のメリットが売主側の開発利益として残るのか、買主側の購入価格に反映されるのかは、案件価格や市場環境によって変わります。
補助金のメリットを売主と買主のどちらが享受するのか
これは今後、系統用蓄電池の売買市場が成熟するほど重要になるテーマだと思います。
例えば補助金によって2億円の投資負担が軽減された案件があったとしても、
売主がその案件を市場価格いっぱいで売却すれば、補助金による経済的メリットの多くを売主側が得る可能性があります。
反対に、補助効果が販売価格にも反映されれば、買主は少ない投資額で同じ収益を取得できるため、購入時の期待利回りやIRRが高くなる可能性があります。
したがって投資家は、
「この案件は補助金を利用しています」
という説明だけで判断するのではなく、
「その補助金メリットが販売価格にどの程度反映されているのか」
まで確認する必要があります。
補助金採択済み案件と「補助金予定」は全く違う
案件情報を見る際に、もう一つ注意したいのが表現です。
例えば、
「補助金活用予定」
「補助金申請予定」
「補助金申請済み」
「補助金採択済み・交付決定済み」
では意味が異なります。
SIIの2026年の補助事業でも、申請しただけで補助金の交付が確定するものではないことが明記されています。
したがって、投資家が案件を購入する場合には、
どの段階まで補助金手続きが進んでいるのか
を確認する必要があります。
「補助金を使える予定だからこの利回りです」という案件であれば、採択されなかった場合の収支も確認しておくべきでしょう。
補助金なしでも成立するかを確認する
そこで弊社が投資家向けの記事で特にお伝えしたいのが、
補助金なしの場合の事業収支も確認する
という考え方です。
例えば、
補助金ありならIRR12%。
補助金なしならIRR3%。
という事業と、
補助金ありならIRR12%。
補助金なしでもIRR8%。
という事業では、同じ「補助金利用時IRR12%」でもリスクの性質が違います。
後者の方が、補助金への依存度は低いと言えます。
したがって投資判断では、
補助金ありケース
補助金なしケース
の両方をシミュレーションして比較することが重要です。
補助金は事業スケジュールにも影響する
補助金を利用する場合、投資額だけを見てはいけません。
2026年に実施されているSIIの系統用蓄電システム等の支援でも、契約・発注等は交付決定後に行う必要があり、交付決定前に行った場合は補助対象外になる旨が示されています。
つまり、
補助金を使うために工事・発注時期を調整する必要がある
場合があります。
系統用蓄電池では、系統連系時期や設備納期、EPC工程も事業収益に影響します。
補助金を待ったことで運転開始が遅れれば、その期間に得られたはずの収益を失う可能性もあります。
したがって、
補助金額だけではなく、補助金を利用することで事業開始時期がどう変わるのか
まで含めて比較する必要があります。
2億円の補助金を得るために1年遅れたら?
これも架空の例で考えてみましょう。
補助金を利用すれば、
投資負担が2億円減る
とします。
しかし、その手続きや事業スケジュールの関係で運転開始が1年間遅れ、その蓄電所が本来年間6,000万円のキャッシュフローを生み出せるとすれば、
単純に考えると、
2億円の投資負担軽減
だけでなく、
▲6,000万円の運用機会
についても考える必要があります。
さらに資金調達コストなども発生する可能性があります。
実際にはこれほど単純ではありませんが、
補助金額だけでなく「時間」も投資コスト
という考え方が重要です。
IRRが時間価値を考慮する指標である理由もここにあります。
補助金を利用した設備には出口の確認も必要
系統用蓄電池への投資では、
建設して終わり
ではありません。
将来的には、
保有を継続する
設備を更新する
第三者へ蓄電所を売却する
という出口があります。
補助事業では、事業終了後に要件を満たさなくなった場合に補助金返還が必要となるケースもあり、制度上の義務や財産処分等について公募要領・交付規程を確認する必要があります。
つまり、
補助金によって入口のIRRが改善しても、出口の自由度に制約が生じる可能性がある
ということです。
特に数年後の売却を想定している投資家は、購入前に確認しておく必要があります。
中古蓄電所市場にも補助金履歴が影響する?
今後、系統用蓄電池の中古市場が形成されれば、
「この蓄電所はどの補助金を利用して建設されたのか」
もデューデリジェンス項目になる可能性があります。
中古蓄電所の買主は、
- 補助金の種類
- 交付額
- 補助対象設備
- 財産処分に関する条件
- 事業継続義務
- 売却・譲渡時の手続き
- 補助金返還リスク
などを確認する必要が出てくるでしょう。
つまり補助金は、建設時だけではなく、将来の売却にも関係する可能性があるわけです。
国だけでなく自治体の制度も確認する
系統用蓄電池の補助制度は国だけではありません。
例えば東京都では、東京電力管内の電力系統に直接接続する大規模蓄電池の導入に必要な経費の一部を助成する制度を設けています。
2026年度申請分については、2026年9月1日から9月30日までが交付申請期間として公表されています。
したがって事業計画を立てる際には、
国の制度
+
都道府県の制度
+
その他対象となる支援策
を確認することが重要です。
ただし、国の補助事業では他の国庫補助金との併用不可などのルールもあり、地方自治体の制度との併用についても個別確認が必要です。
単純に複数の補助率を足して投資額を計算しないよう注意が必要です。
収益不動産と比較すると補助金の影響が分かりやすい
弊社は不動産会社ですので、収益不動産と比較してみましょう。
例えば1億円の一棟マンションを購入して年間NOIが500万円なら、単純なNOI利回りは5%です。
国から、
「マンション購入費の一部を補助します」
ということは通常ありません。
一方、系統用蓄電池は社会インフラや再生可能エネルギー導入拡大に関係する政策的な設備であるため、導入支援制度が設けられています。
このため、
同じ設備・同じ収益力でも、補助制度の活用状況によって投資家の実質投資額が変わる
という特徴があります。
これは、一般的な収益不動産投資との大きな違いの一つです。
投資家が確認したいのは「補助率」より実質投資額
系統用蓄電池案件を検討する際には、
「補助率は何%ですか?」
だけではなく、次のように確認すると投資判断がしやすくなります。
- 総事業費はいくらか
- 土地代はいくらか
- 補助対象経費はいくらか
- 補助金の想定額はいくらか
- 交付決定済みか
- 最終的な自己負担額はいくらか
- 借入はいくら利用するのか
- 補助金なしの場合の収益性はどうか
- 補助金あり・なしでIRRはどう変わるか
- 運転開始時期に影響しないか
- 将来売却する際に制約はないか
ここまで確認して初めて、
「補助金によって、この投資がどの程度有利になるのか」
が見えてきます。
系統用蓄電池は「表面利回り」だけでは判断しにくい投資
系統用蓄電池案件を見ると、
「想定利回り○%」
といった数字が目に入ります。
もちろん一つの判断材料にはなります。
しかし、
補助金
借入
運用期間
設備劣化
設備更新
アグリゲーター報酬
市場収益
売却価格
まで考えると、単年度の利回りだけでは投資の全体像を把握できません。
そこで重要になるのが、IRRや長期キャッシュフローです。
特に補助金を利用する案件では、
補助金なしのIRR
補助金ありのIRR
借入を含めた自己資金IRR
など、複数のケースを比較することで案件の本当の投資効率が見えやすくなります。
補助金によって「良く見えている案件」ではないか?
投資家としては、ここまで一歩踏み込んで考えたいところです。
例えば非常に高いIRRが提示されている案件でも、
その理由の大部分が補助金による投資額圧縮だった場合、
補助金がなかったらどの程度の事業性なのか
を確認する必要があります。
反対に、
土地条件が良い。
工事負担金が合理的。
設備価格も適正。
運用収益も保守的に計算されている。
そのうえで補助金が利用できる。
という案件であれば、補助金は本来の事業性をさらに高める材料になります。
弊社としては、
「補助金があるから良い案件」ではなく、「良い案件に補助金が加わる」
という考え方の方が、投資判断としては健全ではないかと考えています。
まとめ|補助金は利回りを高める可能性があるが、IRRまで見て判断する
系統用蓄電池の補助金は、投資家にとって非常に大きなメリットになる可能性があります。
補助金によって実質投資額が圧縮されれば、同じキャッシュフローでも投資額に対する収益性は高くなります。
さらに初期投資が小さくなれば、長期間のキャッシュフローを考慮するIRRにも大きな影響を与える可能性があります。
しかし、重要なのは、
補助率だけを見ないことです。
総事業費のうち何が補助対象になるのか。
最終的な自己負担額はいくらなのか。
補助金がなくても事業として成立するのか。
運転開始時期に影響しないのか。
将来的な売却に制約はないのか。
そして、
補助金を含めた購入価格が本当に妥当なのか。
ここまで確認して初めて、補助金を投資判断に正しく反映できるのではないでしょうか。
系統用蓄電池は、
土地+電力+設備+金融+投資
が組み合わさった事業です。
レジスタ合同会社では、系統用蓄電池について用地の売買・賃貸だけでなく、系統連系、権利付き土地、EPC・造成・電気設備工事会社との連携、完成済み蓄電所の売買までを見据えた取り組みを進めています。
今後も不動産会社の立場から、単に「利回り○%」という数字だけではなく、総投資額、補助金、IRR、出口戦略まで含めて系統用蓄電池投資を考えるための情報を発信していきたいと思います。
※本記事中の6億円・4億円・年間6,000万円等の数値は、補助金が投資採算に与える影響を説明するための架空のモデルケースです。実際の補助金額・対象経費・収益性等を示すものではありません。また、補助制度は年度や公募ごとに変更されます。実際の投資・申請・税務判断にあたっては、最新の公募要領や専門家等への確認が必要です。
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