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日影規制とは?土地購入前に確認したい建築物の高さ制限
土地や一棟収益不動産を購入するとき、
「この土地には何階建ての建物を建てられるのか?」
「容積率をどこまで使えるのか?」
は非常に重要なポイントです。
建築できる建物の規模を確認する際、多くの方がまず見るのは、
- 用途地域
- 建ぺい率
- 容積率
- 高度地区
- 斜線制限
などではないでしょうか。
しかし、もう一つ忘れてはいけない規制があります。
それが「日影規制」です。
日影規制は、建築物によって周辺の土地に長時間の日影が生じることを防ぎ、良好な住環境を守るための高さ制限です。
特にマンションや共同住宅など、ある程度高さのある建物を計画する場合には、建築できる高さや建物形状、配置に影響することがあります。
今回は、土地や一棟収益不動産の購入前に知っておきたい「日影規制」について、不動産売買の視点から分かりやすく解説します。

日影規制とは?
日影規制とは、中高層建築物によって周辺に生じる日影を一定時間以内に抑えることで、主に住宅地の日照環境を確保するための建築基準法上の規制です。
建物を建築すると、当然その北側などには影ができます。
低い建物であれば影響は比較的小さいですが、建物が高くなれば影も長くなり、周辺の住宅や土地が長時間日影になる可能性があります。
そこで一定規模以上の建築物について、
「周辺の土地を長時間日影にしてはいけません」
という基準を設けているのが日影規制です。
重要なのは、単純に「高さ○mまで」と決める規制ではないことです。
建物によって生じる影をシミュレーションし、その影が一定時間を超えないように建物の高さ・配置・形状などを調整します。
日影規制はなぜ冬至日を基準にするの?
日影規制を調べると「冬至日」という言葉が出てきます。
冬至は、一年の中でも太陽高度が低く、建物による影が長くなりやすい時期です。
そのため、日影規制では原則として冬至日に生じる日影を基準として検討します。
つまり、
「一年の中でも影の影響が大きくなる冬の条件で、周辺にどの程度の日影を生じさせるのか」
を確認するわけです。
日影規制はどのように判断する?
日影規制では、建築物が周辺へ落とす影について、一定の測定面において日影となる時間を確認します。
対象区域や用途地域などによって、
「敷地境界線から一定の範囲では○時間以上日影にしてはいけない」
といった基準が定められます。
よく目にするのが、
「4時間・2.5時間」
「5時間・3時間」
といった表示です。
例えば「4時間・2.5時間」という指定であれば、敷地境界線からの距離に応じて、それぞれ許容される日影時間が設定されています。
ただし、具体的な規制時間、測定面の高さ、対象となる建物などは地域によって異なります。
物件概要に数字が記載されている場合も、その数字だけを見るのではなく、対象地にどの規制が適用されるのかを確認する必要があります。
日影規制はすべての建物にかかるわけではない
日影規制は、すべての土地・すべての建築物に一律に適用されるわけではありません。
対象となる区域や建物の高さ・階数などによって適用関係が変わります。
例えば低層住宅地では比較的小規模な建物から対象となる場合がありますが、その他の用途地域では一定以上の高さを持つ建築物が対象になるなど、条件が異なります。
また、商業地域などでは日影規制の対象区域になっていない場合もあります。
したがって、
「東京都内だから同じ」
「マンションだから必ず同じ規制」
というわけではありません。
対象となる土地ごとに確認することが重要です。
斜線制限と日影規制は何が違う?
前回の記事では、
「道路斜線・隣地斜線・北側斜線」
について解説しました。
斜線制限と日影規制は、どちらも建築物の高さや形状に影響するため混同されやすい規制です。
しかし、考え方は異なります。
斜線制限は、道路境界線や隣地境界線などを基準として斜めのラインを設定し、原則としてその範囲内に建物を収める規制です。
一方、日影規制は、
「その建物を建てた結果、周辺に何時間の影ができるのか」
を確認します。
簡単に整理すると、
斜線制限=建物の形そのものを一定のラインで制限する
日影規制=建物によって生じる影の時間を制限する
という違いです。
北側斜線と日影規制も違う
北側斜線制限も、北側の住環境や日照に配慮するための規制です。
そのため、
「北側斜線があるなら日影規制は必要ないのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、この2つも別の規制です。
北側斜線は、北側の境界線を基準として建築可能な高さを斜線状に制限します。
日影規制では、実際に建物によって生じる日影時間を確認します。
土地によっては両方の規制を確認しなければならない場合があります。
高度地区とも併せて確認する
さらに東京都23区の土地調査では、前々回ご紹介した「高度地区」も重要です。
例えば土地の物件概要に、
「第二種高度地区」
と記載されていたとしても、それだけで建築可能な高さが決まるわけではありません。
実際には、
高度地区+斜線制限+日影規制
などを重ねて確認する必要があります。
その結果、最も厳しく影響する条件によって建築計画を調整することがあります。
つまり、不動産の物件概要に記載された一つの規制だけを見て、
「ここなら○階建てまで建てられる」
と判断することはできません。
日影規制によって建物の形が変わることもある
日影規制をクリアするためには、単純に建物全体を低くすればよいとは限りません。
例えば、
- 建物の配置を変更する
- 建物の一部を低くする
- 上階をセットバックする
- 建物形状を変更する
- 高層部分を敷地の特定方向へ寄せる
など、設計上の工夫によって日影時間を調整することがあります。
そのため同じ土地面積・同じ容積率でも、敷地形状や方位、周辺道路などによって計画できる建物が異なります。
これが、土地の建築ボリュームを物件概要だけでは判断できない理由の一つです。
「容積率300%」でも300%使えるとは限らない
これまでの記事でも繰り返しお伝えしていますが、土地購入では非常に重要なので改めて触れておきます。
例えば、
土地面積100坪
指定容積率300%
という土地があったとします。
単純計算では、
100坪×300%=延床面積300坪
となります。
しかし、実際には、
- 前面道路幅員による容積率制限
- 道路斜線
- 隣地斜線
- 北側斜線
- 高度地区
- 日影規制
- 地区計画
- 敷地形状
などが影響します。
その結果、指定容積率300%に対して、実際には250%程度しか消化できないということも考えられます。
土地の価値を判断するときは、
「指定容積率が何%か」だけでなく、「実際に何%程度まで容積を消化できるのか」
を見ることが重要です。
土地の方位や形状によっても影響が変わる
日影規制では太陽によって生じる影を検討するため、土地の方位や建物配置が重要になります。
例えば同じ100坪の土地でも、
- 間口が広い土地
- 奥行きの長い土地
- 東西に長い土地
- 南北に長い土地
- 角地
- 不整形地
などでは、同じ建物をそのまま配置できるとは限りません。
周辺の道路や隣地との位置関係によっても、日影の生じ方が変わります。
そのため、土地価格を坪単価だけで比較するのではなく、建築しやすい土地かどうかという視点も重要です。
一種単価を見る場合にも注意したい
土地売買の現場では「一種単価(一種いくら)」という指標を使うことがあります。
一種単価は、土地価格を容積率で調整して比較するための便利な指標です。
しかし、例えば指定容積率400%の土地について、
「容積率400%だから、この一種単価なら安い」
と判断しても、日影規制や斜線制限によって実際には400%を十分に消化できなければ、土地の実質的な利用価値は変わります。
したがって、開発用地などを評価するときには、
指定容積率だけを使った一種単価と、実際に建築可能なボリュームを分けて考える
必要があります。
不動産会社やデベロッパーが土地購入前に建築士へボリュームチェックを依頼する理由の一つです。
日影図とは?
実際の建築計画では、建物によってどのような影が生じるのかを確認するため「日影図」を作成することがあります。
日影図では、冬至日における時間ごとの影の位置などを図面上に表します。
さらに、一定時間以上日影となる範囲を確認することで、計画している建物が日影規制に適合しているかを検討します。
一般の方が日影図だけを見て建築可能なボリュームを判断するのは簡単ではありません。
本格的な土地購入や建築計画では、建築士などの専門家による検討が重要になります。
ボリュームチェックで日影規制を確認する
マンション・アパート・ビルなどの建築を前提として土地を購入する場合、建築士へ「ボリュームチェック」を依頼することがあります。
ボリュームチェックでは、
- 用途地域
- 建ぺい率
- 容積率
- 前面道路
- 接道条件
- 高度地区
- 道路斜線
- 隣地斜線
- 北側斜線
- 日影規制
- 防火地域・準防火地域
- 地区計画
- 自治体条例
などを確認しながら、
その土地にどの程度の建物を計画できそうか
を検討します。
収益マンションを建築するのであれば、さらに、
建築可能面積
↓
賃貸可能面積
↓
想定戸数
↓
想定賃料収入
↓
建築費
↓
事業収支
というところまで検討することになります。
日影規制は土地価格にも関係する?
日影規制があるから土地価格が直接○%下がる、という単純なものではありません。
しかし、日影規制によって建築できる床面積が減れば、土地から得られる収益も変わる可能性があります。
例えば、マンション開発用地で、
A土地では賃貸可能面積1,000㎡
B土地では賃貸可能面積800㎡
しか確保できないのであれば、同じ土地面積でも事業収支は異なります。
デベロッパーが土地に出せる価格も変わってくる可能性があります。
そのため、土地売買では、
「何坪ある土地なのか」よりも、「その土地でどの程度の事業ができるのか」
という視点が重要になるケースがあります。
一棟収益不動産の購入でも日影規制は確認したい
日影規制は、更地を購入して新築するときだけの問題ではありません。
すでに建物がある一棟マンションや一棟ビルを購入する場合にも、将来の建替えを考えるのであれば確認しておきたい項目です。
例えば現在、
8階建て
延床面積1,500㎡
のマンションが建っていたとしても、
将来建替える際に同じ8階建て・1,500㎡を建築できるとは限りません。
建築当時から、
- 高度地区
- 日影規制
- 用途地域
- 容積率
- その他の建築規制
などが変更されている可能性があるためです。
既存不適格建築物との関係
建築当時は適法だったものの、その後の法改正や都市計画の変更などによって現在の基準に適合しなくなった建物を「既存不適格建築物」といいます。
既存不適格建築物は、建築当初から違法だった「違反建築物」とは異なります。
ただし、将来建替える場合には原則としてその時点の法令に適合する建築計画が必要になります。
そのため、
現在の建物より建替え後の建物が小さくなる
可能性があります。
収益不動産を購入する際には、現在の家賃収入や利回りだけでなく、将来の建替え可能性も出口戦略の一つとして確認しておきたいところです。
日影規制の対象外なら高い建物を自由に建てられる?
これも注意が必要です。
仮に日影規制の対象外だったとしても、
「自由に高い建物を建てられる」
という意味ではありません。
日影規制とは別に、
- 建ぺい率
- 容積率
- 前面道路幅員
- 道路斜線
- 隣地斜線
- 高度地区
- 絶対高さ制限
- 地区計画
- その他の条例
などが適用される可能性があります。
つまり、
一つの規制がない=建築制限がない
ではありません。
不動産調査では複数の法令制限を重ねて確認する必要があります。
不動産会社の役所調査が重要な理由
最近では自治体の都市計画情報をインターネットで確認できるようになり、用途地域や高度地区などを自分で調べることも比較的簡単になりました。
しかし実際の不動産売買では、
「この土地は日影規制の対象なのか」
「どの規制時間が適用されるのか」
「複数の用途地域にまたがっている場合はどうなるのか」
「現在の建物と同規模の建替えが可能なのか」
など、個別に確認しなければならない事項があります。
そのため、不動産売買の仲介会社では、必要に応じて自治体の都市計画・建築指導担当部署などへ確認を行います。
インターネットで情報を取得できる時代になっても、役所調査が重要である理由の一つです。
土地購入では「建てられるはず」で買わない
特に建築を前提として土地を購入する場合に重要です。
例えば、
「容積率300%だから5階建てくらい建つだろう」
「周辺に6階建てマンションがあるから、この土地にも建つだろう」
といった推測だけで土地を購入するのは危険です。
隣の土地とは、
- 用途地域
- 高度地区
- 道路幅員
- 敷地面積
- 敷地形状
- 方位
- 接道
- 日影規制
などの条件が異なる可能性があります。
建築を目的として土地を購入するのであれば、購入前に建築士などへボリュームチェックを依頼することが重要です。
レジスタでは「土地に何が建てられるか」まで意識して調査します
レジスタでは、東京都23区を中心に土地や一棟収益不動産の売買仲介を行っています。
土地の価値を判断するときは、
土地面積
坪単価
建ぺい率
容積率
だけを確認すればよいわけではありません。
特にマンション・ビルなどの建築や将来の建替えを想定する場合には、
「実際にどの程度の建築ボリュームを確保できるのか」
という視点が重要です。
必要に応じて建築士などの専門家とも連携しながら、土地・収益不動産の購入や売却をサポートいたします。
まとめ
日影規制とは、中高層建築物によって周辺に生じる日影を一定時間以内に抑え、主に住宅地の日照環境を確保するための建築基準法上の規制です。
ポイントを整理すると、
- 冬至日の日影を基準として検討する
- すべての土地・建物に一律に適用されるわけではない
- 用途地域や自治体の指定などによって規制内容が異なる
- 斜線制限とは別の規制
- 高度地区とも併せて確認する必要がある
- 建物の高さだけでなく配置や形状にも影響する
- 指定容積率をすべて消化できない原因になることがある
- 一棟収益不動産では将来の建替えにも関係する
土地や収益不動産を購入する際に重要なのは、
「容積率が何%あるか」だけではなく、「実際にどの程度の建物を建築できるのか」
を確認することです。
特に東京都23区では土地価格が高いため、建築可能な床面積の違いが土地評価や事業収支に大きく影響することがあります。
「高度地区」「斜線制限」「日影規制」をセットで理解しておくと、土地や一棟収益不動産を見る際の理解が一段深まります。
東京都23区を中心に土地・一棟収益不動産の購入・売却をご検討の方は、レジスタまでお気軽にご相談ください。
※本記事は日影規制について一般的な考え方を解説したものです。具体的な規制内容や建築可能な高さ・規模は、所在地、用途地域、自治体の指定、敷地条件、具体的な建築計画等によって異なります。実際の建築計画については行政窓口、建築士等へご確認ください。
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