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収益不動産の建物比率とは?減価償却による節税効果と売主との交渉ポイントを解説

収益不動産を購入する際は、物件価格や利回り、融資条件だけでなく、売買価格のうち土地と建物をそれぞれいくらとするかも重要な検討事項になります。

先日、弊社で買付証明書をご提出いただいたお客様から、

「減価償却による節税効果を高めるため、固定資産税評価額の割合よりも建物価格を高く設定したい」

というご要望をいただきました。

買主様にとっては、建物価格を高くすることで、購入後に計上できる減価償却費が増える可能性があります。

一方で、今回の売主様は消費税の課税事業者でした。

土地の譲渡には消費税が課税されませんが、事業者が行う建物の譲渡には原則として消費税が課税されます。そのため、建物価格を高くすると、売主様側では建物にかかる消費税額が増える可能性があります。

最終的には土地・建物価格の配分について双方の条件が折り合わず、今回の交渉は成立しませんでした。

このように、収益不動産の売買では、買主と売主で土地・建物の価格配分に対する考え方が異なることがあります。

今回は、収益不動産における「建物比率」とは何か、減価償却との関係、売主が課税事業者の場合の注意点について解説します。

 

 

収益不動産の建物比率とは?

建物比率とは、土地と建物を一括して売買する不動産について、売買価格全体のうち建物価格が占める割合をいいます。

例えば、土地付き一棟マンションの売買価格が1億円で、契約上の内訳が次のようになっていたとします。

  • 土地価格:6,000万円
  • 建物価格:4,000万円

この場合、建物比率は40%です。

計算式は次のようになります。

建物比率=建物価格÷土地・建物の売買価格×100

この建物比率が高いほど、買主が取得する建物の取得価額は大きくなります。

 

なぜ土地と建物を分ける必要があるのか?

土地と建物は、不動産として一緒に売買されることが多いものの、税務上の取り扱いは異なります。

特に重要なのが、次の2点です。

土地は減価償却できない

土地は、年月の経過によって価値が減少する資産とは扱われないため、減価償却の対象になりません。

土地を1億円で購入したとしても、その購入代金を毎年の経費として分割計上することはできません。

建物は減価償却できる

建物は、使用や時間の経過によって価値が減少すると考えられるため、原則として減価償却の対象になります。

国税庁も、建物については購入代金などの合計額から、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて取得費を計算するとしています。

つまり、同じ1億円の物件でも、

  • 土地8,000万円・建物2,000万円
  • 土地5,000万円・建物5,000万円

では、購入後に減価償却できる金額が大きく異なります。

 

減価償却とは?

減価償却とは、建物などの固定資産の取得価額を、法律上定められた耐用年数などに応じて、複数年に分けて経費計上する仕組みです。

例えば、建物価格4,000万円の収益不動産を購入した場合、その4,000万円を購入した年に全額経費とするのではありません。

構造、築年数、取得時期などに応じて計算した減価償却費を、毎年の必要経費または法人の損金として計上します。

建物の取得価額が大きくなれば、一般的には減価償却の対象となる金額も大きくなります。

 

建物比率が高いとどのようなメリットがあるのか?

不動産投資家にとって、建物比率を高くする主なメリットは、購入後の減価償却費を大きく計上できる可能性があることです。

課税所得を圧縮できる可能性がある

減価償却費は、実際にその年に同額の現金が出ていかなくても、会計上の費用として計上できます。

家賃収入から管理費、固定資産税、修繕費などを差し引いた利益に、さらに減価償却費を計上することで、課税対象となる所得を抑えられる可能性があります。

例えば、減価償却前の利益が年間800万円あり、減価償却費を年間300万円計上できれば、単純化すると課税対象となる利益は500万円になります。

ただし、実際の税額は、個人か法人か、他の所得や損失、適用税率、物件の用途などによって異なります。

キャッシュフローと会計上の利益に差が生まれる

減価償却費は、購入時に支払った建物代金を後の年度に配分して費用化するものです。

毎年、減価償却費と同額の現金が出ていくわけではありません。

そのため、

現金は手元に残っていても、税務上の利益は減少する

という状態が生じることがあります。

これが、不動産投資で減価償却が重視される理由の一つです。

 

建物価格が高いほど永久に得をするわけではない

建物比率を高めることによる効果は、無条件に利益が増えるというよりも、税負担の発生時期を調整する効果として理解する必要があります。

建物の減価償却を多く計上すると、その分だけ建物の帳簿上の残存価額は減少します。

将来物件を売却する際には、建物の取得価額から所有期間中の減価償却費相当額を控除した金額が取得費の計算に影響します。

そのため、保有期間中に減価償却費を多く計上できても、売却時には取得費が小さくなり、譲渡益が大きくなる可能性があります。

つまり、建物比率を高めるメリットを判断する際は、

  • 保有中に得られる税負担軽減効果
  • 将来売却する際の譲渡益
  • 保有予定期間
  • 個人と法人の税率
  • 売却時期
  • 将来の出口戦略

まで考えることが重要です。

単純に「建物価格が高ければ得」とは限りません。

 

土地と建物の価格は自由に決められるのか?

売買契約は当事者間の合意によって成立するため、土地と建物の価格についても、買主と売主が協議して定めることになります。

ただし、税務上は、根拠なく土地価格を低くして建物価格を大きくするような配分が、常に認められるとは限りません。

国税庁は、土地と建物を一括して譲渡した場合、譲渡代金を土地と建物に合理的に区分する必要があるとしています。

合理的な区分方法として、次のような方法が示されています。

  • 譲渡時の土地・建物それぞれの時価による按分
  • 相続税評価額や固定資産税評価額を基にした按分
  • 土地・建物それぞれの原価を基にした按分

また、契約書で土地と建物の価格が区分されている場合でも、その区分額がおおむね適正な価格であることが重要です。

したがって、固定資産税評価額の比率は実務で利用される代表的な方法の一つですが、必ずその方法だけを使わなければならないわけではありません。

一方で、固定資産税評価額と大きく異なる建物比率を希望する場合は、鑑定評価、時価、原価、建物の状態など、合理的な根拠を用意する必要があります。

 

固定資産税評価額による按分とは?

土地と建物の価格が契約上明確に分かれていない場合、実務では固定資産税評価額の割合を使って按分する方法がよく用いられます。

例えば、固定資産税評価額が次のようになっていたとします。

  • 土地評価額:6,000万円
  • 建物評価額:4,000万円
  • 合計評価額:1億円

売買価格が1億5,000万円の場合、評価額の割合に応じて按分すると、

  • 土地価格:9,000万円
  • 建物価格:6,000万円

となります。

固定資産税評価額は公的な評価額であり、計算根拠を説明しやすいことがメリットです。

ただし、固定資産税評価額が実際の市場価値と完全に一致しているわけではありません。

特に東京都心では、土地の市場価格が固定資産税評価額を大きく上回ることもあります。

そのため、固定資産税評価額による按分が、すべての物件で唯一適正な方法になるとは限りません。

 

売主が課税事業者の場合に建物比率が問題になる理由

土地と建物を一括して売買する場合、消費税の取り扱いが異なります。

  • 土地の譲渡:消費税は非課税
  • 建物の譲渡:課税事業者が事業として譲渡する場合は、原則として消費税の課税対象

国税庁も、土地と建物を一括譲渡した場合、土地部分は非課税であり、建物部分についてのみ課税されると説明しています。

そのため、課税事業者である売主にとっては、建物価格が高くなるほど、建物部分に対応する消費税額も増える可能性があります。

例えば、税抜きの土地・建物価格の合計が1億円で、建物価格について次の2案があったとします。

案1

  • 土地:7,000万円
  • 建物:3,000万円
  • 建物にかかる消費税:300万円

案2

  • 土地:5,000万円
  • 建物:5,000万円
  • 建物にかかる消費税:500万円

単純化した例では、建物価格を2,000万円増やすことで、建物にかかる消費税は200万円増えます。

買主にとっては減価償却費を増やしたいという希望がありますが、売主にとっては消費税負担が増える可能性があります。

このため、土地・建物の価格配分について、買主と売主の利害が一致しないことがあります。

 

買主が課税事業者なら消費税を控除できるとは限らない

買主も課税事業者であれば、建物購入時に支払った消費税について、仕入税額控除を受けられる可能性があります。

ただし、すべての不動産投資で全額控除できるとは限りません。

例えば、住宅の貸付けによる賃料収入は、原則として消費税が非課税です。

そのため、居住用賃貸マンションなどの購入では、建物にかかる消費税を仕入税額控除できない、または制限される場合があります。

一方、事務所や店舗の賃料など、課税売上に対応する建物については、条件によって仕入税額控除の対象となる可能性があります。

買主側の消費税の取り扱いは、

  • 個人か法人か
  • 課税事業者か免税事業者か
  • 居住用か事業用か
  • 課税売上割合
  • 簡易課税か本則課税か
  • 高額特定資産等に関する規定

などによって異なります。

建物比率を検討する際は、減価償却だけでなく、消費税の取り扱いについても税理士に確認する必要があります。

 

売主が個人の場合はどうなる?

売主が個人であっても、必ず建物に消費税がかからないとは限りません。

重要なのは、売主が消費税の課税事業者に該当し、その建物の売却が事業として行われる課税取引に当たるかどうかです。

一般の個人が自宅を売却するような取引と、不動産賃貸業を営む課税事業者が収益物件を売却する取引では、税務上の取り扱いが異なる可能性があります。

売主の名義だけで判断せず、課税事業者かどうか、どのような事業に使用していた建物かを確認することが重要です。

 

建物比率の交渉はいつ行うべきか?

建物比率について希望がある場合は、売買契約を締結する前に条件を明確にしておく必要があります。

実務上は、買付証明書を提出する段階で、

  • 希望購入価格
  • 手付金
  • 融資利用の有無
  • 契約希望時期
  • 決済希望時期
  • 土地・建物価格の希望配分
  • 消費税の内税・外税
  • その他の条件

などを記載または提示します。

売買価格について合意した後に建物比率の変更を求めると、売主にとって想定外の税負担が生じる可能性があります。

特に売主が課税事業者の場合は、売買価格だけでなく、建物価格と消費税額を含めた手取り額を確認して条件を判断します。

そのため、建物比率に希望がある場合は、できるだけ早い段階で仲介会社を通じて売主へ伝えることが大切です。

 

建物比率を高くしたい場合に準備したい根拠

固定資産税評価額による按分よりも建物価格を高くしたい場合、単に「減価償却を増やしたい」という買主側の事情だけでは、売主や税務上の説明として十分でない可能性があります。

検討材料となるものには、次のようなものがあります。

  • 土地と建物の固定資産税評価額
  • 周辺土地の実勢価格
  • 路線価や公示地価
  • 建物の再調達価格
  • 建物の築年数と構造
  • 建物の修繕・改修履歴
  • 不動産鑑定評価
  • 売主の帳簿上の土地・建物価格
  • 新築時の工事費や取得原価
  • 契約書に記載された消費税額

売主の帳簿上、土地と建物の価格が明確に区分されている場合は、その金額も重要な判断材料になります。

 

建物比率が高い物件ほど良い物件なのか?

建物比率が高ければ減価償却の対象額は増えますが、それだけで良い投資になるわけではありません。

建物価格の割合が高い物件には、次のような特徴がある場合があります。

  • 土地価格が比較的低い
  • 建物が新しい
  • 建築費が高い
  • 建物規模が大きい
  • 設備や仕様が充実している

一方、建物は時間の経過とともに老朽化し、修繕費も発生します。

土地の資産価値が低く、建物価値に価格の多くを依存している物件では、将来の売却価格が下がる可能性もあります。

東京都心の収益不動産では、土地価格の割合が大きいため、建物比率が低くなるケースも少なくありません。

しかし、土地の資産価値が高く、賃貸需要や売却時の流動性が安定していれば、建物比率が低くても魅力的な投資になることがあります。

 

節税だけを目的に物件を選ぶのは危険

不動産投資では、減価償却による税負担の軽減が注目されやすいものです。

しかし、節税効果だけを優先して物件を選ぶと、次のような問題が起こる可能性があります。

  • 賃貸需要が弱く空室が増える
  • 修繕費が想定以上にかかる
  • 金融機関の評価が低い
  • 売却時の買い手が限られる
  • 土地の資産価値が低い
  • 減価償却終了後に税負担が増える
  • 売却時の譲渡益が大きくなる

収益不動産は、節税商品ではなく、家賃収入と資産価値を生み出す投資資産です。

建物比率や減価償却は重要ですが、

  • NOI・NOI利回り
  • 実際のキャッシュフロー
  • 土地・建物の積算価格
  • 修繕履歴
  • 賃貸需要
  • 融資条件
  • 将来の出口戦略

なども含めて総合的に判断する必要があります。

 

仲介会社は税額を確定できない

不動産仲介会社は、土地・建物価格の希望を売主へ伝え、交渉を調整することはできます。

しかし、個別のお客様について、

  • どれだけ節税できるか
  • 減価償却費はいくらになるか
  • 消費税を控除できるか
  • 将来の譲渡税はいくらになるか

といった税務判断を確定することはできません。

購入前には、買主様側の顧問税理士や会計士へ相談し、希望する土地・建物価格の配分が適切か、実際にどの程度の効果が期待できるかを確認することが重要です。

また、売主様にも税務上の影響があるため、売主様側の税理士への確認が必要になる場合があります。

 

レジスタでは条件交渉の背景まで確認します

レジスタでは、東京都23区を中心に、一都三県の収益不動産の購入・売却をサポートしています。

収益不動産の売買では、表面的な価格だけでなく、

  • 土地・建物価格の配分
  • 建物にかかる消費税
  • 買主の減価償却方針
  • 売主の手取り額
  • 融資条件
  • 契約・決済スケジュール
  • 修繕履歴
  • 賃貸収支
  • 将来の出口戦略

など、さまざまな条件が交渉に影響します。

土地・建物価格の配分は、買主にとっては減価償却や投資効率に関わり、売主にとっては消費税や売却後の税務に関わる重要な条件です。

双方の希望と税務上の合理性を確認しながら、取引条件を調整する必要があります。

 

まとめ

建物比率とは、土地と建物を一括して売買する収益不動産について、売買価格全体のうち建物価格が占める割合です。

建物は減価償却の対象になりますが、土地は減価償却できません。

そのため、買主にとっては建物価格が高いほど、購入後に計上できる減価償却費が増え、保有期間中の課税所得を抑えられる可能性があります。

一方、売主が課税事業者の場合、建物価格が高くなると、建物にかかる消費税額も増える可能性があります。

両者の関係は、次のように整理できます。

  • 買主は、減価償却のため建物価格を高くしたい場合がある
  • 課税事業者である売主は、消費税負担を考慮して建物価格を高くしたくない場合がある
  • 土地・建物価格の配分には合理的な根拠が必要
  • 固定資産税評価額による按分は代表的な方法の一つ
  • 契約で区分した金額も、おおむね適正であることが重要
  • 減価償却による節税効果は、将来の売却税務まで含めて検討する必要がある

建物比率は、不動産投資の収益性や税務に影響する重要な項目です。

ただし、建物価格を高く設定すれば必ず有利になるわけではありません。

税務上の合理性、売主側の消費税、将来の譲渡益、土地の資産価値、物件の収益性まで総合的に確認することが大切です。

東京都23区を中心に収益不動産の購入・売却をご検討の方は、レジスタまでお気軽にご相談ください。

※本記事は一般的な制度や実務上の考え方を説明するものであり、個別の税務判断を行うものではありません。具体的な減価償却、消費税、所得税・法人税の取り扱いについては、税理士などの専門家へご確認ください。

 

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